というわけでカフカを紹介したいと思います。

カフカといえば、ある朝起きたら虫になっていたという

「変身」が最も有名で、「変身」だけは読んだことがあると

いう方も多いと思いますが、個人的に「変身」は

カフカの作品の中でもかなりおとなしい方で、カフカの

ヘンテコな魅力は比較的薄めだと思っております。

僕はカフカのヘンテコな魅力が特に濃縮して詰まっているのは

「城」「審判」「ある戦いの描写」の三作品だと思うので

ここではまず「審判」「城」をご紹介したいと思います。

「審判」

ある朝主人公ヨーゼフKが突然逮捕され

裁判に巻き込まれることになります。

Kは法廷や裁判所事務局に出向いたり

弁護士に依頼したり、裁判経験者に相談をしたり

色々と手を尽くすのですが、それが何の裁判で

何故彼が逮捕されることになったのかがまるで分かりません。

裁判そのものについても、進行しているのか、

進行していないのか、有罪か無罪か、そもそも

裁判は本当にもう始まっているのか、まだ始まってすら

いないのかも全く分からない状態の中でヨーゼフKは

様々な努力を重ねるのですが、事態は何一つ進展せず

全てが無意味な努力に終わるという作品です。

事態が一歩前進したと思ったら、しっかり一歩戻され、

ある人物から裁判について有益な情報を得たと思ったら

別の人物からはそれを完全に否定される。

何をしても何もかもがまるで進展せず同じところで永遠に

もがき続けエネルギーだけを消費して、何も得られないまま

最後には力尽きて(…と言っておきます)死ぬというこの不毛っぷり。

「審判」は未完の作品なのですが、カフカは結末だけは

先に書いていたため、結末はちゃんと用意されています。

そういうわけで、結末すら存在しない「城」と比べれば比較的

読みやすい作品であります。

「城」

五百ページもある長編小説ですが、カフカが完成させることなく

死んだので未完の作品です。

ストーリーは「城」から測量の仕事で呼ばれたKが、城の所領である

雪深い小さな村に到着した所から始まります。

Kは早速城に出掛け仕事を始めようと思うのですが、城からは

何時までたっても連絡が来ず、外来者であるKは城へ行く事も許されず

城の役人からはそもそも仕事など依頼していないし呼んでいない…

…と完全に存在を否定されてしまいます。

とりあえず城の所領の村に住み、何とか測量士として「城」に存在を

認めてもらい測量の仕事をする為にあらゆる手を尽くすのですが

「審判」のヨーゼフKと同様、何をしてもまるっきり事態は進展しません。

効果的であると思われた手がまるっきり無意味だったり、

事態を変えてくれる力をもった人物を味方につけたと思ったら

実は何の力も無い人物だったり、とにかく事態が動いたと思うたびに

次にはそれが否定され、ゼロに引き戻されます。

例えば物語後半、努力の甲斐あっていよいよKが「城」の長官の

第一秘書から名指しで呼び出しを受けることになります。

ここでついに事態が少しでも進展するかと思うと、その秘書から

告げられるのは、とうの昔に解決していることについてのどうでも

いいような注意事だけで、またもやKは失望することになります。

こうして「審判」の主人公と同様、同じところで延々ともがき続ける

だけで、何時までたっても何の進展もないままにエネルギーだけは

消費し続けるという不毛地獄が続きます。

最初にこの「城」は未完と書きましたが、一応結末が用意されていた

「審判」とは異なり、カフカが途中で執筆を放棄したままで死亡したので

本当に物語の途中でブツ切りで唐突に終わります。

この物語途中での唐突のブツ切りの後味の悪さは例えようも無く

到底読了後のサッパリ感や、カタルシスなどは皆無で

残るのはただ何とも言えない嫌な感じととてつもない疲労感だけですが

この不毛地獄で永遠にもがき続けるKの物語のラストとしては

物語の不条理性を際立たせるまさにピッタリのラストだと思います。

楽しんでスイスイ読める作品ではありませんし、最後まで読めば何か

この長編に相応しい結末が提示されるとか、何かが解決するとかいう

物語でもありませんし、そういうストーリー的期待をもって読み進めて

いると大変なことになりますが、個人的にカフカの作品の中では

「ある戦いの描写」と並んでナンバー1の作品なんじゃないかなと思います。

このなんとも形容できない絶望的な不毛地獄を味わいたいお方だけにオススメです。